山下レディースクリニック
リコンビナントFSH製剤のことで・・・
2007年10月8日
不妊歴4年目の30歳で、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)です。今度、はじめて体外受精を受けるのですが、主治医の先生に、「あなたの卵巣刺激には、リコンビナントFSH製剤を使いたい」と言われました。ただでさえ体外受精ということでドキドキしていたのに、遺伝子組み換え製剤を使うと聞いて、ますます腰がひけています。食品でも、遺伝子組み換え食品は避けている消費者が多いと思うのですが、大丈夫なのでしょうか? どうして、私にはこのクスリのほうがいいのでしょうか?
リコンビナントFSH製剤について
久しぶりのQ&A掲示板の再開です。
みなさんも、過去の相談事例集を読まれてなお、問題が解決しない場合は、どうぞ遠慮なくご質問を投稿されてください。
『りんちゃん』さん、そしてみなさん、従来使われてきた注射タイプの排卵誘発剤(FSH製剤)は、閉経した女性のおしっこからFSH(卵巣刺激ホルモン)成分を抽出してつくられたものだということをご存じでしたか? FSH成分だけを抽出しようとしても、どうしても完全にとり除くことができなかった不純なタンパク成分が含まれます。またLH(黄体化ホルモン)成分もわずかに含まれてしまいます。
ご質問のリコンビナントFSH製剤は、これとはまったく異なる遺伝子組み換え(リコンビナント)技術を使ってつくられた排卵誘発剤です。ハムスターの卵子に、ヒトのFSH成分をつくる遺伝子を組み込むことで、この卵から純度の高いヒトFSHがつくられるのです。
いよいよご質問の件ですが、遺伝子組み換え食品の場合は、遺伝子が変えられてしまったもの、そのものを口に入れますが、この薬はあくまでも製造過程で遺伝子を組み替え技術を使っているというだけで、つくられたFSH成分はヒトのFSHそのものです。従来の製造方法よりも、不純物が少なく安全性は高いと言われていますので、その点はあまりご心配にならずともよいでしょう。
主治医の先生が、あなたにこの薬をおすすめになったのは、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)のためだと思われます。もともとご本人のLH(黄体化ホルモン)の値が高いPCOSの方に、LH成分が含まれたHMG製剤(FSH成分+LH成分)などの排卵誘発剤を投与すると、OHSS(卵巣刺激症候群)を起こしやすくなるのです。従来の製造方法の場合、FSH製剤と呼ばれているものでも、ごく微量にLHが含まれていますので、より安全な卵巣刺激を目指されたのだろ うと考えられます。
なお、通常の卵巣刺激の場合は、LH成分が適度に含まれている方が、卵胞の発育を促すのに効果的だともいわれています。
『りんちゃん』さんのはじめての体外受精が、うまく成功されますことを願っております。
<ご注意>
この相談事例集は、あくまでも参考にとどめ、実際に何らかの行動をとる場合には、
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